指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

住民票をとりに行く。

子供の入園申込のために今日は住民票をとりに行って来た。隣の駅近くの公園には隅に小さな図書館のようなものが建っていて、そこでとることができる。午前中、降っていた雨が小やみになったときを見計らって子供を連れて出かけた。前にも書いたことがあるけど、15分ほどの道のりだ。
窓口は開いていたけど他に手続きを待っている人もなく、3分ほどで住民票はとれた。子供は雑誌のコーナーから大部の「時刻表」や「鉄道ジャーナル」を引っ張り出してきてソファーでおとなしく眺めていた。この施設を利用するのは初めてなのだが、小ぢんまりとしていてなかなかいい感じだ。一面がガラス張りでそこから見えるのは公園の広い敷地とそこに立つ豊かな緑の木々だけだ。絵本のコーナーも広くそこは靴を脱いで上がり読み聞かせができるようになっている。全部は見られなかったが書架も結構並んでいて暇つぶしに読むには十分な量の本が収められている。何より混んでいないのがいい。朝の散歩の途中といったいでたちのおじさんやおじいさんが何人か、静かに新聞を広げているだけだ。予定にはなかったのだけど子供が見つけた電車図鑑を開いてテーブルで眺めた。
用が済んで外に出るとまた雨が降り始めていた。公園を走り回る子供にかっぱを着せ、とりあえず他の用も済ませてしまおうと説得する。家人に頼まれていたレンタル屋へのCDの返却を済ませ、マクドナルドでオレンジジュースとフライドポテトのおやつ。その後牛めし松屋へ行き牛めしの持ち帰りを頼む。子供の大好物だからだ。
こう書いてみると「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の中の主人公が一番のどかに過ごす時間みたいに自分と子供が過ごしているように読める。あるいは「国境の南、太陽の西」の主人公が子供の送り迎えをしている場面みたいな感じに。でも本当の僕の気持ちとしてはそれほどのどかでもないしのんびりもしていない。うっかり「予定にはなかったのだけど」と本音がこぼれてしまったが、どんなことでも予めきちんと自分なりに予定を立てそれをひとつひとつこなして行くイメージで行動している。できるだけ短時間でこなしてしまいたいし、想定外の事件が出来することをひどく嫌う。子供と接しているときはできるだけ自分のそうしたところを抑えゆったりのんびり構えようと決めているのだけど、そしてそれは確かに年々うまく行くことが多くなっているのだけど、それでもそういう思いが子供に何か暗いものを与えていはしないかと気にかかることが多い。せっかちや短気というのともちょっと違う。これについては自分なりにあれが原因かと思い当たることがある。でもその原因から今の自分まで途切れずに一本の線を引くと、それは自分なりには納得できるけどおそらく他人の了解は得られそうもないほど頼りないものになってしまう。いつかはわからないが、うまく言えるときが来るといいと思う。
牛めしの弁当を片手に子供の手を引きながら帰ってきた。