指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

アルコールに弱くなった気がする。

もう十数年前からつき合いのある取引先の人と何年か振りで会い、夜は接待ということになった。行きつけのパスタハウスへ行き、その人はアルコールはほとんど口にしないので僕だけがビールの小瓶を3本とワインをフルボトルで1本、4時間弱かけて飲んだ。途中から酔いがぐっと回るのがわかった。記憶がなくなる程ではないけれど、俺酒弱くなったかなと思うには充分な酔いだった。
最近はほとんどなくなったけれど以前は接待というのが結構あった。平均すると月に一回くらいのペースだったと思う。でも接待で酔いが回ったということはなかった。得意先の人を駅に送り終えた瞬間にがっくり来ることはあっても、とりあえずホストとしてゲストの前で酔っ払うわけには行かないというささやかな矜持があり、頭も体もそれを支えることができていた。それが昨夜はちょっと勝手が違った。
原因はもちろん普段の酒量が減ったせいだと思われる。11月は四回しか酔いつぶれなかった。週に一回弱という本人としては驚異のスローペースだ。それも連夜の睡眠不足のせいで、いいや今日は寝ちゃおうと決めただけのことで翌朝まで残る酒ではなかった。晩酌も結構したけど少し休んでから風呂に入って酔いが醒め、結局深夜まで起きていることも多かった。それ以上にまるで飲まない日が随分あった。酒自体も焼酎から日本酒へと比較的度数の少ないものへと変わった。要するに全体のアルコール分の摂取が減ったのだ。
まあこれから先景気がよくなることもなさそうで、接待が以前のように頻繁になることもあまり考えられないから、別に酒が弱くなったなんて問題にするほどのことでもないようにも思える。でも酒が強いというのは僕の数少ない看板のうちのひとつだったので、それをおろさなければならないことに本人はショックの色を隠せずにいる。