指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

2002年のピンボール。

二〇〇二年のスロウ・ボート (文春文庫 (ふ25-1))

二〇〇二年のスロウ・ボート (文春文庫 (ふ25-1))

少し前のことになるけど村上春樹さんの作品のリミックスという企画があって確か四作品が発売された。大体小説のリミックスという意味がよくわからなくて無視した。つか正直嫌悪感みたいなのが先に立った。そういうのは偏見に過ぎないから読まず嫌いはよくないとも思ったけど、とりあえずそんな思いはひとまず押しつぶすことに決めた。
しかし昨日の新聞で文春文庫の今月の新刊のラインアップの中に古川日出男さんの「二〇〇二年のスロウ・ボート」を見つけたとき、これは村上さんの「中国行きのスロウ・ボート」を下敷きにしてるんだね、というところまでは気づいた(気づかいでか!)ものの、それが読まず嫌いのままにしといた村上春樹リミックスの内の一冊だったとはうかつなことに気づかなかった。理由を書くのが本当に恥ずかしいのだけど、古川さんの名前をはっきりと意識したのが「ベルカ、吠えないのか?」の評判だったので、それから時を経ずに文春文庫の広告を見て、あ、古川という人の本が文庫になった、しかも村上さんと無関係じゃないみたいだ、手頃な上に村上チックじゃこれは買いだ、という風に導火線がつながったわけだ。文庫化に際して改題されたことも若干の言い訳にはなるかも知れないが、いずれにせよ同一の作品に対して単行本発売時と文庫本発売時とで180度違う反応をしたことになる。すごく節操がない。
でもまたリミックス企画で本が出てもやはり僕は買わないだろうと思う。中上健次リミックスとか、村上龍リミックスとか、高橋源一郎リミックスとか。そんなの読む時間があるくらいならオリジナルの作者の作品を読み返したいと思うのだけど、まあそれもまだ狭量なのかなあ。