指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

スウィングトップが欲しい。

ヴァンヂャケットのスタジャンが手に入ったら、何だがむらむらとスウィングトップが欲しくなってきた。スウィングトップとはブルゾンのことでヴァンヂャケットではブルゾンとは言わずにスウィングトップの名で売っている。もとはゴルフのときに羽織るものだったというのを随分昔にどこかで読んだ気がするが、ほんとかどうかわからない。ちなみにスタジアム・ジャンパーという名称は、ヴァンヂャケットが考案した和製英語だそうだ。これはスタジャンに付いてきたタグに目を通して初めて知った。
VANのスウィングトップに出会ったのはかれこれ25年前のことだ。当時の下宿仲間が貸してくれてひと秋の間愛用していた。ちなみにトラッドという服装についていろいろなことを教えてくれたのもその下宿仲間だった。
当時のスウィングトップは裏地がついていなかった。素材もコットンでそれほど厚くなく、防寒という用途にはあまり向かない。中にセーターを着たとしても真冬だと寒々しく見える。その上早い話が紺のブルゾンなので、何となく電器屋の店員か水道屋の営業みたいなテイストになる。でもすごく気に入って着ていた。どこへ行くにもちょっと羽織ることができるというそのあり方と、毎度おなじみ背中のバックプリントにやられていたのだ。
じゃあ早いとこ自分で誂えりゃよさそうなものだったが、結果的に25年の二の足を踏んだ。とりあえず不必要なアイテムだったからだ。先にも書いたようにスウィングトップに適した季節はそれほど長くない。厚いインナーを着てまで防寒に配慮すると何となく貧乏くさい。考えてみると割と難しいアイテムのような気もする。
でもスタジャンは買ったのだ。それとまるで同じ力の込め方と気合いの質があれば自動的にスウィングトップも手に入る道理だ。今回は通販を選ばずショップに出かけてみることにした。サイトで見るとショップもそれほど多くはなかったが、川崎の丸井に入っていることがわかった。川崎は仕事でたまに訪れる。家人もそれほど欲しいのなら、と特に口出しはしない。
しかしVANのあるはずのフロアを僕は二周してしまった。もっと大きなショップを想像していたからだ。ちょっとその辺の店員さんに尋ねようかと思い始めた頃やっと見つけることができた。
それは確かにコンパクトではあったが、すばらしい品揃えのショップだった。すばらしい。大げさに言うとこの25年間俺は何をやっていたんだと思うほど手に取るもの手に取るものがずっと探していた色と形だった。シンプルでオーセンティック。日本のアイビールック。もう服はVANでしか買わない。
スウィングトップにはいつの間にかチェックの裏地がつくようになっていた。購入以来ほぼ毎日着ている。ここ数日の寒でそろそろスタジャンに切り替える時期が来ているように思える。