指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

著書で綴られた略歴。

吉本隆明 自著を語る

吉本隆明 自著を語る

遅れて来た吉本さんファンとしてはその各仕事のつながりを見出すのは容易でなかった。また一冊一冊の著書をその都度読んでいれば、著書間のつながりについてはひとまず置いておいても全く差し支えないとも言える。親鸞について書かれた本は親鸞についてわかればいいし、それは対象がシモーヌ・ヴェイユでも太宰治でも柳田国男でも同じことだ。
でもやはり初期の詩集から「言語にとって美とはなにか」、「共同幻想論」、「心的現象論序説」くらいまではつながりを仮定できる気はしていた。本書では初期詩集から「言語美」までの間のさらに四作品が取り上げられていて、その都度その都度の吉本さんの関心のありかとその根拠を伺うことができる。と書くと今までにもそういうモチーフで編まれた本があってもよさそうなのだが、僕が読んだ中では初めての試みですごく新鮮だった。インタビュアーがロッキング・オン渋谷陽一氏で、吉本さんの本を熱心に読んで来ながらも基本的には門外漢だという姿勢を貫いているのもうまく行っている気がする。ちょっと崇拝の度が過ぎるきらいはあるとしても。
入門書としてもいいような気がするけど何しろ古い本ばかりが取り上げられているのでそこが鼻についてしまうと逆効果かも知れない。このインタビューの連載は現在も続いているということなので、それが新たな一冊にまとめられるのが今から楽しみだ。