指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

チョコレートをもらってすごくうれしかったという記憶がない。

バレンタインデイをどう過ごしていたかをこのブログで当たってみると一昨年は豆を食べていて歯を割ったようだった。昨年は2月14日の記述自体が無い。まあそれほど関心が無かったのだろう。ここ数年のバレンタインデイはと言うと、会社の女の子たちがお金を出し合って買って来てくれたチョコレートをもらっておしまいだ。こう言っては申し訳ないけどもともと甘いものが大好きという訳でもないので特にうれしくもない。
それでつらつら考えてみたらこれまでバレンタインデイに何かをもらってうれしかったという記憶がない。大学に入って初めて女の子とつき合うようになるまでは義理チョコ以外もらったことがないと思う。その初めてつき合った女の子とはつきあい始めてから初めてのバレンタインデイに思い出したくもないような重くて暗い喧嘩をして、それはそれ以後「他者」という言葉について真剣に考えさせることになるような本当にひどい体験だったんだけど、そのトラウマのせいか、彼女からその後も何年かチョコレートをもらっていたはずなのにうれしかった記憶がない。もっとも、つき合ってる女の子からバレンタインデイのプレゼントをもらってもあまりありがたみはないかも知れない。
その彼女と別れてからひとつ年下のすでに人妻の方からチョコレートをもらったことがあるがそれも特にうれしくはなかった。と言うか、贅沢な話だがちょっと迷惑だった。目元のきりっとした意志的な顔立ちのきれいな人だったが、旦那があまり見向いてくれないという身の上話なんか聞いているうちに変な感じになって来て、何て言うかはっきりと誘惑されたりして困った。一ヶ月後にチョコレートのお礼を渡すとき、やっぱりちょっとやばいんでという話をしたら不満なようだったが、その後すぐに懐妊して(いや、もちろん僕は無関係です。)それどころの話ではなくなった。
やっぱりあれは意外性と言うか、思いもかけない女の子からもらって、もらってみたらその子のことを憎からず思っていたことに気づいた、とか、ありきたりだけど密かに想っていた子に思いがけずもらえたとか、そういうサプライズ感がないともらってうれしいという感情にはなかなかたどり着けない気がする。いや、バレンタインデイがらみじゃないだけで、女の子との間ですごくうれしかったという体験は、そりゃあありますよ、人並みには。人並みより幾分少なめかも知れないけどまあその程度には。(2008/02/13)