指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

今年の一冊目。

詩の力 (新潮文庫)

詩の力 (新潮文庫)

吉本隆明さんの本はここ二十年くらいのものは目につく限り買って読んでいると思っていたし、現に昨日も暮れに出た新刊を目ざとく見つけて購入したばかりなのだが、この本の元になった「現代日本の詩歌」という作品は買った憶えだけあって中身は一行も憶えていなかった。読んでなかったと思われるが理由がわからない。読みにくかったり難解だったりするかと言えばそんなことは全然ないので、詩歌にコンプレックスがあるせいで無意識に遠ざけたのかも知れない。
小説に関してはある時期にある密度で読むとなんとなく読み方が身につく気がする。実際今ではかなり難解な小説を読んでも自分なりに決まりをつけられそうに思われるが、現代詩や短歌や俳句はもっと微細な世界で量をこなせばどうということがない。それどころか目の前を何の感興ももたらさない文字だけがつるつると滑って行き、ただひたすら巻が終わるのを待っているという事態になりかねない。それが自分の置かれた情けない場所だ。ところが、この本に引用された詩句のいくつかについて、これはいいんじゃないかと思わされて驚いた。もしかしたら集中的にがつがつ読んだら詩歌も読めるようになるのではないかと思われた。
おまけに吉本さんの以下のような倫理観も受け取ることができる。

(前略)私にとっては、そんなふうに、その人がその職業や専門家「らしくない」、何でもないような顔をしていられるというのは、人間としての人格的な理想でもある。(後略)

これだけ絶賛される人格の持ち主が誰であるかは本書に当たっていただきたい。いや、結構有名な人ですよ。