指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

授業参観。

一月は一応予算も達成したし二月の売り上げも割に順調で、でも惨敗した十二月のことを考えると二月でいくら積み上げても積み上げ過ぎるということはないんだけど、例年二月は仕事が暇で今年もご多分に漏れなかったので今日は貯まっていた代休の一日を消化することにした。例によって家人と食事でもして半日ゆっくり過ごす訳にも行かなかったのは、子供の小学校の授業参観日に当たっていたからだ。特に今まで見たことのない音楽と英語の授業があることになっていたのでそれは参観しておきたかった。その他にも子供の意中の女の子がどんな子なのかも興味があったし、子供たちにけん玉とかお手玉とかを父兄が教える時間が設けられていて僕はコマ回しを教えることになっていたりもしたので、自分としては会社を休むに足るだけの理由はあると思われた。
音楽は得意でリズム感と音感がよいことを先生から聞かされていたが、なるほど大変楽しそうにタンバリンやトライアングルやピアニカを演奏できていた。赤ちゃんの頃からよく何かの曲を聞かせながら抱っこした子供の背中やおしりをリズムに合わせて柔らかく叩いたり揺すり上げたりしていたんだけど、そのときにこうしているともしかしたらリズム感が良くなるんじゃないかと心密かに思った。もちろんそのせいで今の子供があるかどうかはわからない。少なくとも家人ならそんなの関係ないんじゃないのと言うだろう。そう言うよね?
英語はかなり本格的な内容で驚かされた。公立小の一年生の授業なのにまずネイティブの先生がいらっしゃり、その先生は子供たちに最初から最後まで英語でしか話しかけない。担任の先生が付き添っていて難しいところはフォローなさるが、それにしてもネイティブの先生に教わるなんて僕は大学まで一度もなかった。そういう意味では発音の正しさばかりでなく、外国人とか外国の文化とかに早くから慣れさせようという意図があるのかも知れなかった。授業内容はチャンツと伝言ゲームだったが、子供はひとり目も当てられないほどはしゃいでいた。困った。
子供の意中の女の子はよく見ると大変気の強そうな顔立ちをしていた。でも子供からふざけかけられても満更悪い気はしないように見えた。遊びに行くときはふたりで連れ立って歩いた。手をつないでいるように思われたが、実際は子供が相手にむんずと腕をつかまれまるで連行でもされてるように引っ張られているだけだった。幼い恋のもろさはよくわかっているつもりだけど、軽く先が思いやられた。