指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

デザート。

埴谷雄高・独白「死霊」の世界

埴谷雄高・独白「死霊」の世界

随分前にブックオフで見つけて買っておいたもの。途中まで読んでやめたらしい。NHKETV特集で1995年の1月9日から13日まで放映された番組の書籍化。とても個人的なことで恐縮だけど、当時僕は怪我をして実家に戻り入院を待っていた。放映が終わった日の翌14日に入院したのでこの番組は見れば見られたはずだが見ていない。そういう心持ちではなかったと思われる。何度か書いたけど、入院から三日後の17日に全身麻酔の上四時間にわたる手術を受けたがそれは阪神淡路大震災が起こった日でもあった。
この本を読んで「死霊」に関して何かがすごくよくわかるということは残念ながら無い。それよりむしろ、埴谷さんの気配と言うか、たたずまいと言うか、あるいは話すときの呼吸と言うか、そういうものがリアルに伝わって来るし、それはファンとして(ファンなのか?)感慨深い。
ただ、この人は生活者としてはちょっとひどいんじゃないかと思う。何度か奥さまのことを「気の毒」とおっしゃっているが、気の毒程度で済む話ではない。若い頃は生活を抽象的に捉えていたため埴谷さんの芸術至上主義みたいなのがとてもかっこよく目に映った。同じものを今は否定的にしか見られない。自分でも随分変わったと思う。