指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

電車の何がそんなにいいんだ?

ウルトラセブン」の放映終了から数年して「帰ってきたウルトラマン」の放映が始まったときには小学校の一、二年生だった。毎週欠かさず観ていたばかりか先生が宿題とされていた日記にもしばしば感想を書いた。あるときクラスメイトのひとりから、お前まだウルトラマンなんて観てるの、と見下すように言われた。これが相当ショックだったようで、転校して来たばかりでびくびくしていたこともあって、もうちょっと大人になろうとひそかに思い決めた記憶がある。それで放映が始まったばかりだった「仮面ライダー」に夢中になったんだけど程度としてはあまり変わらない。ただ本人なりにはひとつ大人になった気がしたし、ライダーはウルトラマンより友だちからの風当たりがずっと弱かった。大人になる原動力とはもしかしたらこういうことなのかも知れないと今も時々思う。
いつか子供にもそういう自浄作用が訪れるものと期待して子供の鉄道熱を見ていたけどどうやらそうでもなさそうで、明日小田急に乗ってイベント会場の初日に挨拶に行くから一緒に行くかと尋ねると、それなら新宿からロマンスカーに乗りたいと言う。ロマンスカーにはVSEとかMSEとかがあって、という話が始まったのを聞き流しながらいったい小田急ロマンスカーの何がそんなにいいんだ?と声には出さずに問いかけている。お前まだ電車になんて興味があるの?と誰も子供に尋ねないのか、尋ねられても特に恥ずかしいとも思わないのか。
明日のロマンスカー、相当楽しみみたいねと子供が寝てから家人が言う。そんなに楽しみなことを用意できてよかった、と親ばかの父親はとりあえず思う。