指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

感受性だけがある。

ひとり日和

ひとり日和

すぐにいらいらするしめんどくさがりだし意地悪で残酷なところがある。物欲というのではなしに人の持ち物を何となく盗んでしまう癖もある。そしていつかはタフな人間になりたいと思っている。要するに二十歳にありがちな未熟さを主人公の女の子はふんだんに備えていると言っていい。でも感受性だけはある。もっとも感受性が鋭敏だということはもしかしたら未熟さを証すもうひとつの根拠に過ぎないかも知れない。感受した情報を処理し切れないかのように彼女は考えてばかりいる、らしい。そこを彼氏は疎ましく思う、らしい。別れの予感がしても彼女の方から引導を渡すようなことにはならない。それもまた彼女の未熟さを証しているかも知れない。でもそんな主人公の未熟さにはどこか惹かれるところがある。記憶の中の自分と引き比べてとても共感する部分がある。祈りのような一途な思いも同じライン上にある彼女の特徴かも知れないが、それが現れる場面は深く印象に残った。また端正な文体で描かれる物語は意外に起伏が大きく全体としてすごく面白く読むことができた。主人公を際だたせる、吟子さんのテキトーな安定感もいい。あと吟子さんのうちのロケーションがすごくいい。