指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

かけらの寄せ集めとしての自分。

かけら

かけら

「ひとり日和」がすごく良かったので購入。人は対する他人によって自分を変える。そういう意味では対する他人の数だけ自分のかけらがあり、そのかけらの寄せ集めが自分ということになる。だからどんなに親しいと思った他人でも、あるとき今まで知らなかった顔を見せられて驚くということがいつまで経ってもあり得る。そういうことが静かな文体で淡々と書き記されたのが表題作のような気がした。語り手の視線の細やかさが、細かくなり過ぎないところで抑えられているのに好感を持った。また三作目の「山猫」の、特に理由が見当たらないのに誰かから軽く拒まれ、それが劣等感のようなものにつながって行く様がすごくリアルで共感した。こういうことってある。大したことではないのに、いったん損なわれるともう取り返しがつかないこと。それらはおそらく誰もが体験していて、しかも誰もが忘れている。忘れたくなるような種類の体験だからだ。