指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

すれ違う生活。

月曜日、火曜日と接待で帰宅が遅くなり、疲れているので朝子供が家を出て行くときには僕はまだ寝ていて、反対に僕が帰って来る頃には子供はすでに寝ている、ということが続いた。それほど子供とすれ違うのもすごく久しぶりのことで、すると水曜日の朝おなかをつつかれて目が覚めた。見るとベッドの隣で横になった子供が黙ってこちらを眺めている。笑うでもなく泣くでもないすごく静かで透明な表情だった。それから子供は小さくおはようと言うと、ベッドを抜け出して部屋を出て行った。こちらはまた眠った。同じベッドで寝ているが、起き抜けに子供が僕を起こすということはこれまでに無く、ちょっと生活がすれ違っただけでも子供にとっては何かが心に引っかかる体験だったかと思われた。
同じ日、早くはないものの子供が寝てしまうまでには帰ることができた。すると子供は学校のことやポケモンのことなど矢継ぎ早に話しかけて来る。風呂から上がり家人にドライヤーで髪を乾かしてもらいながら、パパとお話しするのが一番好きなんだと言っているのがかすかに聞こえた。聞こえないふりをしていたら、わざわざそれを言いに来た。他にも好きなことはたくさんありそうなので一番というのは怪しいけど、まあそう言われればやはりうれしい。