指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

よくできてるとは思うんだけど。

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
ある種の小説に対して自分がすごく手厳しいのはわかっていて、それは裏を返すと権威主義みたいなものにつながってる気もして我ながらあまりよい風に思えないこともある。ただこのブログを始めてから特に文体ということが意識されるようになり、何度も書くけど文体というのは作品の信頼性と言うか、信用度と言うか、それを真に受けていいかどうかを左右するもののようにどうしても思いこまれていて、その文体を根拠にする限り権威主義とは紙一重で異なっているんじゃないかと自分では思っている。でも本屋大賞に「1Q84」がノミネートされたのを知ったとき、本屋大賞の格では「1Q84」を大賞にする訳には行かないんじゃないかととっさに思った。それでは本屋大賞の存在意義があらかた吹き飛んでしまう。そう言えば聞こえはいいけど、文体の質としてはもっと劣った作品が代々受賞してるじゃないかと半畳を入れたい気持ちがあった訳だ。そういうときは自分に対して、それはそれで構わないと判断すべきか、やはりお前は間違っていると自戒すべきか、よくわからなくなって来る。
「告白」も、お話としてはある程度よくできていると言えば言える。時間つぶしに読むのには最適な読み物かも知れない。ただ、読書というのは時間つぶし以上の何かだと考えるなら、やはりちょっとどうかなという気がする。たとえば人物の心理をこういう風に動かしたいなら、その根拠をもっとぶ厚く、あるいはもっと的確に書ける文体が無ければいけない気がする。結末もちょっとあり得ないし。