指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

子供が蹴られる。

今週のことだが子供が学校で蹴っ飛ばされて保健室へ行くということがあった。家人が担任の先生から電話で聞いた話によると、下校しようと学校の玄関を出たところで、向こうから子供の方へボールが転がって来た。それを蹴り返そうとしたらへたくそで別の方向へ行ってしまった。仕方がないのでそのまま帰ろうとしたらボール遊びをしていた生徒が追いかけて来ていきなり後ろから蹴られた。首の当たりと背中と二度蹴られたらしい。蹴ったのが六年生だということで実は僕はこれがいちばん驚いた。しかも一緒に遊んでいた六年生はそれを止めようとせず、先生を呼びに行ってくれたのは同級生の生徒たちだったということだ。子供は保健室で治療を受けたが、耳鳴りや目まいなど脳に関する症状が無いということで家人は迎えに行こうかと言ったが、本人がひとりで帰れるということで帰って来た。六年生は保健の先生と子供の担任と自分の担任からかなりひどく叱られたということだった。でも初めは自分は何も知らないと言い張っていたらしい。
夕方にも担任の先生から電話があり、先方の親御さんが直に謝りたいと言っているので電話番号を教えていいかという問い合わせだったが、家人はそれを断ったそうだ。そんな大ごとにしたくないという気持ちと、謝られても困るしその後学校でその父兄と顔を合わせたりしても気まずい、という判断で、学校に関わる機会はどうしても家人の方が多いからそれは仕方ないと思ったけど、僕ならちょっと言いたいことがないでもないと思った。
仕事を終えて帰宅して見ると、首の当たりに五十円玉くらいのあざと言うか傷と言うかがふたつできていて、普通にしていればもう大丈夫だけど触ると痛むと言う。どの程度の力で蹴られたのかはわからないが、たとえ子供が蹴ったボールが腹を立てさせたにせよ、追いかけてきて後ろからいきなり蹴るというのはやろうと思ってもなかなかできることじゃない。つまり日頃からかなり荒れた心の状態、他人の事なんてどうでもいいというくらいの心の状態にいないと、そういうことはできないように思われる。しかも相手は明らかに下級生で自分よりも小さく弱いのだ。
六年生はとても反省しているとその後も先生から連絡があったらしいが、たとえ反省したとしてもその子の心の荒れ方というのはちょっとやそっとでなんとかなるようなものじゃないと、少なくとも僕などの日頃の考え方からするとそういうことになる。
子供は特に怖がるでもなく、翌日から普通に学校に通っている。あまりに突然のことだったので怖がる暇もなかったらしく、本当にそうだとしたらそれは不幸中の幸いだった。