指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

吉祥寺さとうのメンチカツ。

最近吉祥寺に得意先が一軒増え、以前は一ヶ月に一度程度行くだけでよかったのが隔週で行くことになった。駅からの道に吉祥寺さとうのメンチカツを求める有名な行列がいつもあり、あんなには並びたくないけどいつか機会があったら食べたいと思っていた。
いつもは午後になってから行く吉祥寺に、今週はたまたま午前中行くことになり、それなら仕事が終わった後で一緒にお昼を食べようと家人も着いて来た。さとうを通りかかると列に並んでいる人が十数人しかいない。今まででいちばん少ない。それで家人に並んでもらって僕は仕事に行き、うちの夕飯の分と会社へのおみやげと、合わせて十数個のメンチカツを十五分くらい並んだだけで買うことができた。四つか五つ毎に紙の袋に入れられ、それがさらにビニール袋に入っている。熱を逃がすために紙の袋は閉じてないので、いい匂いが当たり中に広がる。そして家人に手渡されたビニール袋は、これがメンチカツかと思うほどにずしりと重かった。ちなみに土曜、日曜、祝日はひとり十個まで、週日はひとり二十個まで買うことができる。
お昼を食べてからおそらく迷惑なほどの匂いを放ちながら、電車に乗って帰って来た。会社の人たちはみなそのメンチカツのことは知っていて、しかも誰も食べたことがなかった。だからおみやげとしては大変ウケた。よかった。
帰宅してから食べてみると、まるまると大きなそれは、肉が大変柔らかく、しかも割にさっぱりしているので、いくらでも食べられそうな気がする。香りが良く、しかも強い。味も深い。もったいないので何もかけずに食べた。子供のためにはふたつ買って来たのだが、余裕で食べてしまったそうだ。
実は会社の上司にちょっとしたお礼がしたかったのだが、先方はいろいろおいしいものを知っていて、大きな百貨店で買ったり取り寄せたりして食べているようで、こちらが多少奮発して何か贈ってもそれほどありがたがられないだろうと思うとちょっと気が重かった。でもこのメンチカツなら、そうそう買いには行かないだろうし、値段も安くて先方の気を遣わせないだろうし、おうちにいる人数分買って来れば夕食に一品増やせるだろうし、で、まず理想的と言えた。