指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

右肩下がりの日本で。

沈む日本を愛せますか?
内田樹さんと高橋源一郎さんに現在の政局について渋谷陽一さんがインタビューしたもの。と言うか、もうほとんど鼎談と言ってもいいかも知れない。日本は右肩下がりでシュリンクする一方、それは高度資本主義が突っ込んで行く未曾有の情況で、誰もそれがどこへ行くかを知らないし、それを語る言語すら持っていない。それが大前提で、小沢一郎ナロードニキ説、政権交代熟年離婚説、「たそがれよ日本」の提言などが次々に飛び出す。高橋さんの冗談とも本気ともつかない話し方が頭の中ですごくよく再現される。比喩も多くてわかりやすい。比喩というのは限度を超えて使われると危ないけど、そこはおふたりのこと、比喩が妥当する範囲をきっちりわきまえて話されているのが気持ちいい。
政局になどあまり関心が無い。それは間接民主制というのが壁となって立ちふさがっていて、民意の反映などとうてい望めないと常々考えているからだ。サラリーマンである限り天引き、かつ言い値で税金は取られるし、それに異を唱える相手もいなければ手段も(さしあたっては)見つからない。そういう位置が衆愚に荷担してるとしても、無力感の中から抵抗するだけのエネルギーを引っ張り出すのは至難の業だよというのが実感だ。
ただしその中でもとても関心を引かれたのは、小沢一郎ナロードニキ吉本隆明という等式。小沢さんの本について吉本さんが評価していたのを随分前だけど読んだ記憶があり、それだけと言えばそれだけの理由で、個人的に小沢一郎さんには悪い印象を持っていない。でも家人などは民主党が大嫌いで、小沢さんもコミでけなす。自分は吉本さん経由で小沢さんには印象が良いので、そういうことを言ってみたいけど何しろ小沢さんの本を直に読んだ訳ではないので何も言えない。ルサンチマンのあり所は異なるかも知れないけど、大衆の現像を取り込もうとする姿勢、知識層に対する反感など、なるほど小沢さんと吉本さんには共通点があるな、と思った。それが吉本さんが小沢さんを評価する根拠なのかも知れない。そういうことがわかって愉しかった。