指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

こういうときに必要なもの。

フラミンゴの家 (文春文庫) 伊藤たかみ著「フラミンゴの家」
離婚後六年でひとり娘は小学六年生。親権を持っている元妻は病気で入院ししばらくの間ということでその娘を預かることになる。自分は父親でも割と子供のことを把握している方だと思うけど六年のブランクがあってしかも難しい年頃に子供がさしかかっている場合、やはり途方に暮れることになると思われる。こういうときに必要なものは何か。
それは物語だ。元妻から始まり最後はまた元妻に帰って行く大きくてかすかなループを描く物語。それを見いだせたことが主人公を救うし、もし自分が同じような立場に置かれた場合も、それを見いだせれば救われそうな気がする。いや、そんなことは嘘かも知れない。実際にはそんな物語は見いだせず、ただ作品の中でだけそれは可能なのかも知れない。それでもやはりこの作品は実際的な処方箋になり得ている。物語だけが何かをきちんと終わらせ、先に進ませる力を持っているのだ、と。
登場人物ひとりひとりの輪郭がくっきりしていてわかりやすく読みやすい。何人かとても心の優しい人たちが登場する。それらの優しさのいくつかには泣かされた。
ここまでで作品の半分に触れた。もう半分も重要だけど結局はそちらも元妻に始まる物語に救われている気がする。