指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

一種のミステリー。

私の男 (文春文庫) 桜庭一樹著「私の男」
赤朽葉家の伝説」以降の桜庭さんの作品が読みたかったので。て言うか去年買ったまま読まずに置いてあった。
腐野淳悟と花の(養)父娘関係はどう考えても不自然なので、その根拠を追いつめて行く一種のミステリーと言えると思う。その根拠に説得力があるかどうかは意見の分かれるところだと思うけど、人の心のあり方を根拠づけているので「赤朽葉家」みたいに鮮やかな謎解きにはならなかった気がする。また「赤朽葉家」に比べて描写の量が多すぎどうしても物語のダイナミズムが削がれている感じがする。もうひとつ、実在の場所に物語のリアリティーを負わせすぎなんじゃないかと思った。これは「赤朽葉家」だけを読んでいた段階では気づかなかったことだ。
でも淳悟の存在感はすごい。うなされた。