指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

短編までやって来た。

冬の夢 スコット・フィッツジェラルド村上春樹訳 「冬の夢」
手許にあったフィッツジェラルドの三編の長編を読み終えて短編集までやって来た。これは一昨年の11月に刊行されてすぐに買って読んだので読み返すまでの日が比較的浅いことになる。だからストーリーや印象的なシーンは随分よく憶えていた。ただし初めて読んだときと比べて遙かに楽しめた気がした。まずフィッツジェラルドの作品をここのところまとめて読んだことによって文体に慣れて来たことが挙げられる。文章のリズムにこちらの呼吸を合わせやすくなった。もうひとつフィッツジェラルドの短編は長編に比べてわかりやすいんじゃないかという気がする。入り組んだところが少なくすっと入って行けるところがある。にわかファンで僭越なことは承知の上で、もしこれからフィッツジェラルドを読もうと思われるなら短編集から入った方が入りやすいかも知れない。
五編収録されているが最初の三編、特に表題作がフィッツジェラルドらしくてとてもいい。喪失の切なさと哀しさがテーマだ。四編目は個人的にはあまり好きではなく、五編目は村上さんも書いておられる通り作者自身の姿と重ね合わせることによって味わいの深くなる作品だと思う。
そして次に読んだ本で、これは心から好きだと言える一編に出会うことになる。