指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

お花見。

子供が幼稚園に上がる前は休みを取って井の頭公園にお花見に行っていた。うちからは結構遠いけどボートに乗って池の水面から見る桜が好きだったからだ。幼稚園に上がると家人と子供は春休みと夏休みに帰省するようになった。春休みに一週間ほど帰省するとちょうど桜の見頃を逃してしまう。それでお花見はしなくなったらしい。自分ではそういう憶えは無いんだけど家人がそう言う。
だから今日お花見に行ったのは家族三人揃ってでは随分久しぶりということになる。花見と言っても近くの公園に家人がつくったお弁当を携えて行ってそれを食べるというささやかなものだ。屋外で飲むビールというのがあまり好きではないのでアルコールは抜きにして子供はオレンジジュースを家人と僕は一本のコーラを分け合って飲んだ。
そこでは何組もの親子連れがレジャーシートを広げて思い思いのものを食べたり飲んだりしていた。子供たち、まだ就学前と思われる幼い子供たちは桜をそれほどありがたがらずにボールを追いかけたり自転車を乗り回したりして遊んでいた。桜は満開をほんの少し通り越してすでに葉っぱがちらほらと見られた。葉が出るほんの少し前のみっしりと花の付いた桜の迫力がとても好きだけど、まあこれでもいいかと思った。あたたかくて平和だ。不意に、元気出しなよと家人が言った。