指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

完全な門外漢なので何も言ったことにならないだろう。

映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫) 内田樹著 「映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想
学生の頃ニューアカデミズムが流行った。浅田彰さんの「逃走論―スキゾ・キッズの冒険」で確か狭義の構造主義はきちんとわかる、みたいに紹介されていた故丸山圭三郎さんの「ソシュールの思想」を読んで、おもしろかったので何年かの間に三回繰り返して読んだ。だからフェルディナン・ド・ソシュールの聴講生のノートから編まれた「一般言語学講義」にはちょっと当てにならないところがあるとか、ソシュール独自の概念、たとえば共時的と通時的とか、ラングとパロールシニフィアンシニフィエなどの概念についてはまあまあ知っている。そこで丸山さんがシニフィアン(意味するもの)とシニフィエ(意味されるもの)はセットなので、切り離して取り扱ってはいけないと繰り返し述べられていたのを憶えている。それはまたソシュール自身の危惧だったかも知れない。
本書で取り上げられているジャック・ラカン(一冊も読んだことがない)の引用によるとラカンシニフィアンを単体として取り扱っている。内田さんもそれに倣っておられるようだ。これがものすごく違和感になったのは自分が不勉強なせいに決まってるので、おそらくラカンかその先行者シニフィアンを単体で取り扱えるような手続きをどこかで踏んでいるのだろう。ただそれ以前にシニフィアンシニフィエと言ってどれだけの人が知ってるんだろうともちょっと思う。
それと「ゴーストバスターズ」に触れたくだりでは単にこのテクスト(と本書に倣って呼んでおく。)がトラウマの緩解の学術的な方法に非常にかなっているという以上のことは言われていない気がする。昔読んだ村上春樹さんの「記号論的世間話」という言葉が繰り返し思い出されて仕方なかった。
いやでも完全な門外漢なので何も言ったことにはなってないだろう。