指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ホークスが日本シリーズに出る。

パ・リーグのクライマックス・シリーズのファイナル・ステージは、BSに入ってないうちでもTokyo MXTVの中継で見ることができた。和田と摂津で一、二戦に勝ったホークスの第三戦の先発は杉内。ライオンズの先発は涌井。両投手とも今年は不思議なほど勝ち星に恵まれず、それだけにこの一戦にかける思いは強かった。またこれは中継のさなかに知ったんだけど、杉内は過去六年でクライマックス・シリーズの成績が一勝五敗と振るわず思いの強さに輪をかけていた。
杉内は立ち上がりが不安な投手だが無難に初回を凌ぎ、その後も涌井に比べると被安打が多めだったが徐々に安定して行く。涌井も同様に危なげない立ち上がりだったが杉内とは逆に後半になって被安打が増えて行く。でもカブレラの二度の併殺打にも助けられて両チームとも無得点のまま延長戦に入った。ホークスの打撃について触れるとすれば内川はいいところで打席が回って来ず、ヒットとフォアボールでの田村の二度の出塁の後、二打席連続でヒットを放った長谷川はこの段階からすでにやや神がかっていた。このニュアンスを伝えるのはとても難しいけど、長谷川の実力をとても高く評価していなければあり得ない采配で、しかもそれに長谷川がきちんと応えた。そこに何か尋常でないものが感じ取れた。
両チーム無得点のまま迎えた延長10回の表、おかわりくん中村の二塁打の後三戦通してまったく当たっていなかったフェルナンデスに二塁打を浴びてついに先制点がライオンズに入る。杉内はマウンドから数歩降りたところで上半身を折り曲げ顔を上げることができなかった。そして抱きかかえられるようにして交代し、ベンチに戻ってもタオルに顔を埋めたままだった。投球数127。
続く金澤はあまりぴりっとしなかったけど森福が抑えて追加点は許さなかった。それでも重い一点で、とりあえず今日はライオンズが勝つだろうと思われた。そしてライオンズが一勝すると、そのまま残り三戦連勝もあり得るような気がした。
10回の裏の展開は実のところあまりよく憶えていない。とにかく涌井が続投してランナーがいてツーアウトで長谷川が打席に立っていた。ライオンズの勝利まであとワンアウトという状況だ。追い込まれた長谷川だったが粘ってフルカウントまで持って行く。先ほどの二打席連続安打の後でそうそう安打は続かないだろうと半分諦めていると、長谷川は二塁打を放ちランナーは返り同点に追いついた。今度は涌井が上半身を深く折り曲げる番だった。そのまま交代になる。感情を表に出さない涌井のあんな姿を初めて見た。投球数は杉内とぴたり同じ127。その後ホークスも追加点は取れなかった。
規定で最終回となる延長12回を同点のまま迎える。馬原がスリーアウトをとってホークスの負けが無くなりこの時点でホークスの日本シリーズ出場が決まるが、試合は同点のまままだ終わっていない。12回の裏にホークスが点を入れようが入れまいが大筋での結果は同じなのに、ただこの試合の勝敗を決するためだけの不思議な攻防が始まった。こんな無意味なイニングが、過去あったろうか。
途中出場でシリーズ通しての初打席だけどシーズン後半にめざましい活躍をした福田がこの回の先頭打者で、ライオンズ抑えの牧田からあっさり二塁打を放つ。続く田村は敬遠で無死一、二塁。そして長谷川の四打席連続ヒットでサヨナラ。無意味な攻防でライオンズの選手たちはどのようにモチベーションを維持していいか本当にわからなかったんじゃないかと思われる。だから随分差し引いて考える必要がある気がするけど、それでも今日の長谷川は神がかっていた。
それと僕ならカブレラと小久保はスタメンからはずす。そして福田とか明石とかを加える。シーズン後半をそうして勝って来たんだから。