指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

4月のまとめ。

繰り返しになるのでたたみます。アイルトン・セナの命日だ。


4月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:3695ページ
ナイス数:16ナイス

カンバセイション・ピースカンバセイション・ピース
読了日:04月29日 著者:保坂 和志
長い終わりが始まる長い終わりが始まる
この作品を読むと、学生の頃のすごくひりひりする心の状態を思い出す。今なら誰でも一定量しか他人を理解することができず、たとえ理解できなくても理解しようという意志が持ち続けられればそれで充分すぎるほど幸せだと思うけど、その一定量を超えて理解してもらいたがっていた。そんな事態はあり得ないのに。無垢であることは鼻持ちならない。そんなことの全部が書いてあると思う。
読了日:04月26日 著者:山崎 ナオコーラ
謎解きはディナーのあとで謎解きはディナーのあとで
そこそこの謎解きをタネにまあまあのユーモアでこね上げた淡いファンタジーと言えば割と間違ってないんじゃないかと思う。数ヶ月前、当時小四だった子供のクラスのお兄ちゃんお姉ちゃんがいる生徒たちが読んでいると聞いたことがあるけど、「性行為」という言葉がそれほどの必然性も無いのに出て来るこの作品を、個人的には子供に読んで欲しくないと思う。なにも小学生がわざわざこれを読まなくてもいいんじゃないかと思う。
読了日:04月26日 著者:東川 篤哉
先端で、さすわさされるわそらええわ先端で、さすわさされるわそらええわ
個人的な想定ではエッセイの言葉をもっとわがままと言うか身勝手と言うか不親切と言うか、そういう方向に突き詰めるとこの作品ができるのではないかと感じられる。つかそれが自己表出性が高いということの意味だ。読者への通路をものすごく細く引き絞りその分どこか別の高みが目指されている。残念ながら僕が判断できるのはそこまでだ。
読了日:04月25日 著者:川上 未映子
静かな爆弾静かな爆弾
神宮球場は他者としての世界、完全には把握しきれないあり方としての世界を指しているのではないだろうか。理屈の上ではその中に響子も響子の家も主人公が仕事で追いつめる真実も含まれているはずだ。でも実際にはそのあまりの多様性のためにそれらを見出すことができない。その中から響子を取り戻すためには、響子自身の意志がどうしても必要だった。そんな結末になっていると思う。彼女は自らの意志で手紙に住所を記したのだから。
読了日:04月23日 著者:吉田 修一
あたしはビー玉あたしはビー玉
「(前略)小説とは、なんだろう。今、あたしが書いているようなものか。(後略)」この作品はこの設定を使って作者によって言わば限定解除されている。つまりなんでもありで構わないということだ。そしてビー玉は語り手であるばかりでなく作者として自分の願望を自由に記述する権利を持つ。だったら最後のキスでビー玉が女の子に変わる訳がない。でしょ。
読了日:04月23日 著者:山崎 ナオコーラ
魔法使いクラブ魔法使いクラブ
結末まで行ってから振り返ってもまだ第一章の語り手の位置はやや不自然だ。その不自然さを解消するにははじめから三人称で書くか、第一章にもっと回想の感じを出すかのどちらかしかないように個人的には思われる。でもそのどちらを選んでも作品全体のインパクトが今よりずっと弱まることに気づかされる。この作品は本当にぎりぎりのところを辿って書かれているのだ。
読了日:04月22日 著者:青山 七恵
極北極北
物語がどこへ行くのかというのと同じくらい気になるのが、徐々に明らかにされて行く語り手の人物像だ。語り手の心と体は住む世界と同じくらい壊滅的な損傷を受けている。やがて極北が場所でもあり同時に概念でもある一瞬がやって来る。おそらくそこが語り手の絶望の最深部だった。語り手はそこをくぐり抜けることができただろうか。
読了日:04月21日 著者:マーセル・セロー
君は弥生人か縄文人か 梅原日本学講義 (集英社文庫)君は弥生人か縄文人か 梅原日本学講義 (集英社文庫)
なんて言うかタイトルはちょっとどうかと思うけどなにしろ大変に読みやすくわかりやすい。アイヌの位置づけ、新宮は神倉神社のお灯祭の解釈、熊野、縄文人弥生人と話題は多岐にわたっているようでいて案外まとまりがあるようにも思われる。ただ少し残念なのは両者の間に相手への遠慮と言うか、礼儀正しさと言うか、なんとなく本音を言うのを避けたり相手に迎合したりという雰囲気が伺われることだ。
読了日:04月11日 著者:梅原 猛,中上 健次
破滅の石だたみ破滅の石だたみ
町田さんはエッセイも割にフィクショナルな文体で書かれることが多い気がするが、この本は比較的そういう感じが弱かった。こういう本で個人的にいちばん興味を惹かれるのは、ご自分の小説作品について触れられたところということになる。だから「屈辱ポンチ」と「告白」について書かれたところはとてもおもしろかった。特に後者については制作のざっくりした意図を知ることができる。
読了日:04月10日 著者:町田 康
九月が永遠に続けば (新潮文庫)九月が永遠に続けば (新潮文庫)
文章の重厚な感じが印象的でただミステリーやホラーであるだけでなく文章で勝負したいという意気込みをすごく感じた。ただ謎解きは確かにすごく意外なんだけど特に後半へ行くに連れて恣意的と言うかあまり必然的じゃないような気がしてしまう。これは登場人物の心の動かし方にも感じられる。そのあたりがもうちょっとかっちり設えられていたなら謎解きの意外さも格段に説得力を持ったんじゃないかと思う。
読了日:04月09日 著者:沼田 まほかる
15歳の寺子屋 ひとり15歳の寺子屋 ひとり
吉本さんの本とは三十年近いつきあいで、この本に出て来るお話の多くはすでにどこかで読んだり聴いたりしたものだった。ただ、ひとはみなかわいそうだという認識と言うか述懐と言うか、それはこの本で初めて知った気がする。吉本さんがこだわった「最後の親鸞」のひそみに倣えば、ひとはみなかわいそうだというつぶやきが「最後の吉本隆明」ということになるか。その一言が核心である思想があるとすれば、確かに親鸞にも吉本さんにもとても似つかわしい気がする。
読了日:04月02日 著者:吉本 隆明
三匹のおっさん (文春文庫)三匹のおっさん (文春文庫)
読了日:04月02日 著者:有川 浩

2012年4月の読書メーターまとめ詳細
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