指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

休日の夕方の散歩。

休日の夕方の散歩を、しばらく休んでたんだけど子供の強い希望で再開した。六月のテーマは都電荒川線で、何週かかけて早稲田から三ノ輪橋まで歩いた。最寄りの駅から都電に乗り、前回そこまで歩いた駅で都電を降り、しばらく線路沿いに歩いてタイムアップのところでまた都電に乗って最寄り駅まで帰って来る。大体一時間内外で五駅か六駅分歩けるので、計三十駅ある都電をのべ五日で制覇できた。
その後埼京線を歩こうということになって、前の日そこまで歩いた十条まで電車で行って、赤羽駅を目指した。大体四十分歩いて到着し、じゃあもう一駅先の北赤羽まで歩こうかという話になった。それで結構いい感じで歩き始めたんだけど、突如川が現れたときには、せいぜいが都電荒川線を踏破したくらいの我々の想像力を遙かに超えた事態の深刻さがまだよくわかってなかった。
川というのは橋がなければ渡れないし、橋がなければどんなに疲れていようとも、橋のあるところまで迂回しなければならない。自分があの日の帰宅難民になった気がした。絶望という言葉に感じとしては結構近い気がした。
橋を探して川を迂回し始めた段階で子供も僕も疲れていた。でも遠く離れた橋にしか望みは無いように思われたので子供を励まして相当歩いた。やっとたどり着いた橋は橋にさしかかると子供も僕も高いところがとても苦手な質なので渡るのが本当に恐かった。今調べてみると我々が渡ったのは荒川を渡る新荒川大橋のようだ。高くて恐いけど、行き交う人たちがまめに言葉を掛け合う場所だった。橋を渡ってからさらに一キロ近く歩いて、目指していた北赤羽ではなく川口駅に着いてそこから電車で帰った。その夜、わかりやすく高いところで恐い思いをしている自分の夢を見た。