指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

またも、川。

休日の夕方の子供との散歩が続いている。前の日に地下鉄を乗り継いで町屋へ行きそこから都営バスの荒川四丁目の停留所まで歩いてバスに乗って帰って来たので、昨日はバスに乗って荒川四丁目に行き、そこから続きを歩くことにした。続きと言っても方向が決まってる訳ではなくなんとなくどこかの駅か停留所にたどりつくまで歩いて、時刻とも相談しながら適当なところで切り上げてJRとか地下鉄とかたまに私鉄とかバスとかを使って帰って来る。バスの場合最寄りの停留所と言ってもそれほど近くなくて降りてからさらに三十分くらい歩いて帰って来たりすることもある。目的が無いと言えば目的なんて無いし、行き当たりばったりと言えばまさしくその通りだ。
それで子供の記憶の路線図に頼ってなんとなく常磐線沿いに歩くことにして、三河島駅を過ぎて途中歩道橋の上から電車の写真を撮ったりしながら南千住まで歩いた。どれくらい時間がかかったかわからないけど、荒川四丁目を出発したのがちょうど午後五時くらいで南千住に着いたときにはすでに六時を回っていたんじゃないかと思う。すると子供がもうひと駅北千住まで歩きたいと言う。大丈夫だよ、すぐだと思うから、とやけに前向きなのに感心して歩くことにした。道が線路からそう遠く離れていないところを続いていたので楽に歩けそうに思えたこともあった。でもその見通しは甘かった。またも行く手を川に阻まれた。
今地図で見ると線路沿いの道から向かって左手に大きく迂回して、隅田川千住大橋で渡ったようだ。渡った後、割に広大な敷地の中央卸売市場足立市場の中の道を歩いて北千住方面に向かった。この前の赤羽〜川口間に比べればほとんど苦も無くとも言えそうな程度だったけどそれでもルートを随分西に振られて予想外に時間がかかった。途中かなり急ぎ足だったけど北千住まで三十分以上はかかったと思う。
それで駅にあった千代田線の路線図を見てふたりで驚いたんだけど北千住は前の日に出発した町屋とひと駅しか離れていなかった。乗ってみるとその区間は地下鉄にしては長めだったけど、それでも二日間にわたり、家を出てから家に帰るまでの時間を合わせたら合計で五時間くらい使ったのに、地下鉄の駅をひと駅分歩いただけだった、というのは残念でもありまたなんとなくそういうもんだよなと思えておかしくもあった。来週は北千住を出発してまたその先のどこかを目指すのだろうか。あと数日で十一歳になる子供は、そういうことを自分で決められるほどには成長した。身長ももう少しで家人に追いついてしまう。