指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

フィクションでしょ。

餓鬼道巡行 町田康著 「餓鬼道巡行」
なんだかよくわからないんだけどエッセイじゃないんじゃないかと思う。前にも書いた通り町田さんの本では「猫」ものがいちばんノンフィクションの文体に近くてその他はエッセイでもかなりフィクショナルになっている。この「餓鬼道巡行」も同じで本格的な小説作品ほどには凝った文体ではないものの、限りなく小説に近い気がする。それと巻末に詩が何編か収録されている。
町田さんの作品の主人公の中では、独特の自己滅却と言うか自己解体と言うかそういう感覚と、それをなかばやけっぱちで押し殺すような自己顕示とが拮抗している。大変多くの作品でそのふたつが見かけられるように思われる。どちらもちょっとだけ病的に見える。でもそれを病的と見る自分がではいったい何によって立っているのかと考え出すと、それほど確かな何かによってる訳ではないことがわかる。町田さんの作品を読み続けるのはその自分に起こる反転のようなものが意味深い体験のように感じられるからかも知れない。今ひらめいた思いつきなんだけどそれほど間違ってはいないような気がする。