指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

すごい雪だ。

たまたまテレビをつけた午後二時近くワイドショーに渋谷の光景が映し出されるまで家人も僕も外がこれほど厚い雪景色になってるとは夢にも思っていなかった。子供が公園に遊びに出かけてすでに一時間近くが経っていた。公園には屋内のエリアもあって雨や雪を凌ぐことはできるが時間と共に降雪が増すと遠くから来ている友だちは帰れなくなる恐れがある。早めに帰れと促しても聞き入れてくれるかわからなかったがとりあえず様子を見に行くことにした。人影もまばらな公園のいちばん広い広場の真ん中に、子供とおぼしき人影と大人ふたりの姿があるのが遠くから見えた。近寄って行くと大人は若い夫婦のようでどうやら子供と一緒に雪だるまをつくり上げたばかりのようだった。ふたりに会釈をしてから子供に寒いから帰ろうと促す。奥さんの方が、ほらお父さんが来てくれたみたいなことを言ってもう一度礼を伝えてそのまま一緒に帰って来た。訊くと友だちが誰もいないけどたくさんの雪で盛り上がってしまったので、ひとりで雪玉を転がしていると同じように雪玉を転がしていたふたりから声をかけられてそれとこれとで雪だるまにしませんかと持ちかけられたそうだ。それから手が冷たいでしょうと温かい缶ココアもいただいたらしい。その分の礼は言えなかったけどまあいいか。