指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ついにカミングアウト。

失業したことは両親には黙っていた。心配させたくなかったからだ。でも不動産を賃貸するなら連帯保証人を立てなければならずそれは父親に頼む以外考えられなかった。今日は午後から賃貸の申し込みをしなければならず仕方なく午前中実家に電話してカミングアウトすることにした。母親が電話口に出るといいなと思っていたけど出て来たのは父親で、母親がいるかと尋ねると出かけていると言う。なので父親に失業していることと保証人になって欲しい旨伝えた。
父親は快諾してくれたが、失業したことを話したくだりで、どうする、こっち戻って来るか、と早口で尋ねた。僕と僕の家族をとりあえず実家で引き受けようかという意味に取れた。胸が詰まった。母親も弟も父親が認知症のせいで時々おかしいと言う。でもたまにしか話さない僕には父親はいつまでも昔の父親のままでどこにもおかしいところが無い。それはでもなんだか少し悲しい。
母親にどう伝わったか心配だったので午後になって再度実家に電話した。大変だったね、と母親は言う。大変だった。本当に大変だったしまだ何ひとつ終わっていない。そのことをやっぱり両親にわかってもらいたかったのだと初めて気づいた。両親とも学習塾を始めるという息子に大賛成し励ましてくれる。そのことのありがたみを思うと涙が止まらない。