指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

三十年入りそこねた店。

午後2時前に一緒に家を出て家人はそのまま駅に向かい吉祥寺でショッピング。僕は塾で電話番だがいつもより早めに切り上げて家人の後を追う。夕飯はランチで行きつけになったイタリアンか、焼き鳥のいせやか迷ったが結局後者にした。井の頭公園に面して窓のある方ではなく、アトレの西側の端っこにある交差点からすぐのお店。僕が初めてこの店のことを知ったのはもう三十年以上前のことだけど興味はありつつも一度も入ったことがなかった。昼間っからジョッキを傾けるおじさんがいたりして結構ワイルドな雰囲気ということもあるけど、就職してからは吉祥寺と言えば仕事でしか行かなかったことも大きい。二十年くらい前に取引先の人に接待されて吉祥寺で一度飲んだことがあるのと、アイルトン・セナが亡くなった年の夏だからやはり二十年近く前に親友のS.Sとマッチ箱のデザインが素敵な吉祥寺のバーで、村上春樹さんの短編「ファミリー・アフェア」で知ったI.W.ハーパーを飲んだのを別にすると夜の吉祥寺というのも訪れたことがなかった。今回は午前0時くらいまでに電車に乗ればうちに帰れる場所でありながらホテルをとってあるので酔いつぶれても構わない気楽さでお店に乗り込んで行った。店内は時折食べ物を焼く煙がもうもうと立ちこめそれを逃がすために扉という扉が開け放してある。立ち飲みのスペースを別にすると四人がけのテーブルが所狭しと並べてありふたり組の客なら相席が基本。テーブルの上は七味のビンとなんだか甘い香りのするオレンジ色の液体を入れたビンが並んでいる。見回すとその液体を小さめのグラスに注がれた透明な飲み物に混ぜて飲んでるお客さんもいる。なんだかわからなかったので結局それは試さずに終わった。生ビールを一杯ずつ飲んだ後、家人はレモンサワーを二杯、僕は酎ハイを四杯飲み、合わせて15、6本の焼き鳥と焼きトウモロコシを一本、それからもつ煮込みを頼んで4,400円ちょっと。安い。でも服が心なしか煙くさい。その後アトレとかパルコとか寄りつつ初めてハモニカ横町というところへ踏み込んで少し前に「ヒルナンデス」で取材されていたお寿司屋さんを見つけたりした。結構楽しそうなお店が並んでいるので今度行きたい。何で締めるか相談してピザとか牛丼とか候補があがったんだけど結局富士そばにした。食券を買うときに立ち食いのくせに結構高いじゃんとか話してたんだけど食べてみるとこれがすごく本格的でおいしくて驚く。完全に甘く見ていてごめんなさい。
うちならカーテンを通して日が射すのでそれでなんとなく目が覚めるがホテルは遮光されたカーテンのせいでいつまでも暗く寝過ごす。ふだん7時に起きる家人が8時40分になってやっと目を覚ました。もちろんそのとき僕はまだ熟睡中。あわてて起きて支度をして朝食バイキングに行く。前にバイキングが苦手という話をしたけど最近、朝食に限っては慣れて来て楽しみにしている。小さめのソーセージを三本に焼いたベーコンを二、三枚、スクランブルエッグを大さじで三杯皿に取ってケチャップをかけ、サラダを三種類ボールに盛ってイタリアンドレッシングをかけミニトマトを載せる。それでパンを食べるかと言うとそうではなくてご飯にみそ汁。ついでに牛肉とこんにゃくとタマネギの煮物もお茶碗大の器に山盛り取り、トマトジュースには黒酢を入れる。その他に温泉卵も取ったら家人に卵食べ過ぎじゃないと突っ込まれた。途中でシャケの焼いたのを追加で取りに行きおいしそうだったので食後に野菜のコンソメスープも持って来てトマトジュースはお代わり。本当に長い間暗い気分が続いていたけど、離職後初の最高に幸せな気分。何もかもうまく行きそうな予感。
チェックアウト後大きめの荷物をコインロッカーに預けてコピス吉祥寺やブックオフナチュラルキッチンなど吉祥寺のルーティンワークをこなす。お昼は朝食のせいであまりお腹が空いてなかったけど昨日見送ったイタリアンを食べる。平気で完食してしまい、太るんじゃないかと心配。仕事があるので間に合うように帰って来て夜はまた居酒屋へ行く。子供は明日帰って来る。