指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

古い文体。

チャイルド・オブ・ゴッド コーマック・マッカーシー作 黒原敏行訳 「チャイルド・オブ・ゴッド」
「ブラッド・メリディアン」よりさらに古いコーマック・マッカーシーの文体に触れられるとなれば個人的には読まない訳には行かない。でも冒頭から一読しただけではなんだかよくわからなくてもう一度読まなければならなかった。その後も何度か読み返さないと意味がよくわからない場所がいくつもあった。国境三部作の文体もそぎ落とされた感じを与えるけどこの作品に比べればはるかに饒舌だ。それほどこの作品はできるだけ文章の量を少なくして成立させたいという意図に拠っている気がする。章立ても細かく次々場面が入れ替わるのでなかなか文章が流れて行かない感じもある。でもそういう文体を採用したい気持ちはわかる気がする。それはある意味でひとつの極限を志向していて考えてみればコーマック・マッカーシーの文体はどの作品でもひとつの極限を目指しているように思えるからだ。
どちらにしてもこれまで読んだコーマック・マッカーシーの作品の中ではいちばんなじめなかった。近くもう一度読み返してもう少しいろいろな発見をしたい。