指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

そして真相がはっきりする。

一昨日まで書いてきた子は結局塾をやめることになった。僕は金銭的な問題がいちばん大きいんじゃないかと読んでいた。でも読み間違えていた。実はその学年は男の子がひとりと女の子が三人という構成だったんだけど、やめることになったAさんと同じクラスのBさんは最近学校でも折り合いが良くないらしく塾ではもうひとりのCさんをなんとなく取り合うような力関係になっていた。いや取り合うというのは正確じゃないかも知れない。Cさんと結託してBさんを仲間はずれにしたいのはAさんだけで、BさんもCさんもそんな気はまったく無かったというのが真相に近い。それなら仲間はずれにされかかっているBさんがやめたくなるのが道理だが、そこがまた微妙なところでAさんはBさんにいやな思いをさせるために塾でだけCさんを利用していたに過ぎず、学校では特にCさんと仲がよい訳ではなくて、むしろ嫌っていた。そこで学校での人間関係と塾での人間関係が徐々に矛盾して来て、あるところで塾に行くこと自体がいやになってしまったということらしい。自縄自縛と言っていいかも知れない。学校では仕方ないけど塾でBさんやCさんと一緒にいるのはいやだと言っているとAさんのお母さんから聞いた。それでお母さんは自分の子が一方的にいやな思いをさせられているという理解の仕方をしているみたいだけど、もちろんそこには強いバイアスがかかっている。
昨日、その子が塾をやめてから初めてその学年の授業があったんだけど、いつもより三人が和んでいるように感じられた。彼女がやめてしまったことについてはそれぞれ「やめたんでしょ」とひと言口にしただけでそれ以上は触れず誰も特に気にかけている様子はなかった。今朝になって僕がまだ暗い顔をしていると家人が、でも残った三人はひとりがやめても全然ぶれずにあなたを信頼して通って来てくれてるんだよ、と言った。やめた子はあなたが思ってるほどあなたを慕ってはいなかったんじゃないかな。それはとても手厳しくとても思いやりのある指摘のように思われた。