指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

「族長の秋」について。

グアバの香り――ガルシア=マルケスとの対話
ガルシア=マルケスの小説の中で個人的にいちばん読みづらかったのが「族長の秋」で最後まで読み通せず何度か挫折した。高橋源一郎さんじゃなかったかと思うけどこの作品は重要なところに差しかかると文体のスピードが上がるみたいなことをおっしゃっていた記憶があり(未確認)ほんとにそうだよなあと思った。十年くらい前だと思うけどやっと全部読むことができた。なんかものすごく変わった小説だなというのが感想でとにかくほこりっぽい灼熱の土地と干上がった海のイメージばかりが残った。だからこの本でいちばん興味があったのは作者が「族長の秋」にどう触れるかということだった。
「あの小説を一言で定義してもらいたいと言われたら、どう答える?」という聞き手の問いに対し作者は素っ気なくこう答えている。

権力の孤独を歌った詩のようなものだ、と答えるより仕方ないだろうな。

苦し紛れのコメントみたいに聞こえるけどでも「族長の秋」の本質をとてもうまく言い表してるような気がする。作品の難解さまでひっくるめて言い当てられているように思われ、なるほどと深く納得した。
1982年刊の対談、もしくはインタビュー集。昨年になって訳された。訳者による二十数ページに及ぶ解説がなんかこれ最近読んだ気がするなと思ったのは「僕はスピーチをするために来たのではありません」の解説と内容が一部かぶっているからのようだ。