指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

なんつーかさ。

子供に厳しい親御さんというのがいてたまにちょっと度が過ぎてるんじゃないかと思うことがある。ひとりの親御さんは体験授業に来たとき、子供が忘れ物をしたと言って初対面の僕がいる目の前で五分ほど子供を叱りつけた。それがヒステリックな感じでいやで子供を見るとすごく暗い顔つきをしている。ちょっと有名な小学校の生徒さんで本来はうちの塾なんかに来る感じじゃないんだけどとにかく引き受けるだけは引き受けた。近く算数の小テストがあるが範囲の問題が全然できてないので対策をして欲しいと先週メールが来たので問題を解かせた。初めは確かにできなかったけど解説をしたらすぐできるようになり、結局範囲の数問をすべて自力で解けるようになって帰って行った。ところがすごくできるようになったじゃんと誉めてもまったく喜ばずに相変わらず暗い顔をしている。もしかしたら親に誉められたことなんて一度もないんじゃないだろうか。
でも本当の問題はここからで、すべてできるようになったので誉めて上げて下さい、とメールを送ったら次の日返信が来てうちで解いたら全然できないんだけどとクレームめいたことが書いてある。問題を前にしてできるんなら説明してみろみたいに自分の子を問いつめたらしい。なんつーかさ。そんなことしたらできるもんもできなくなるよ。あなた明らかに子供に恐れられてるんだからさ。せっかくできるようになったのに親にぶちこわしにされた気がしてさすがに腹が立って無視していた。そしたらその子が昨日塾に来たとき親からの手紙を持って来て、算数のテストはできなかったそうでうちで復習したら基本的なことがまるでわかっていないようだとある。それで問題を解かせると前にできていた問題ができなくなっている。でも解説するとほどなく解法を思い出したみたいで、うちではできないと親が言って来た問題を九割の確率で正解する。僕は生徒さんたちが問題を解いている時間を利用してその親に宛てて、塾でできるのにうちでできないのはどうしてかという手紙を書いて持たせた。最近滅多に腹が立たないけど今回は腹立つなあ。