指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

三年目。

塾を始めて丸二年が経った。一年目はずっと茫然自失、顔面蒼白だった気がする。収入は増えず借りたお金は月々確実に減って行き、一年すらもたずに塾を閉めることになるんじゃないかという不安につきまとわれた。二年目に入るともちろんそれだけで暮らして行けるほどの額にはとても届かなかったけど若干収入が増え、また前年あまりに低所得だったために税制上楽になったり年金の支払いを免除されたり子供の中学でかかる費用を一部負担してもらえたりして感触は良くなった。でも資金的にはまもなく完全なデッドエンドを迎えて結局母親から借金してなんとか凌いだ。(ちなみに家人の実家には前職を辞めたことはいまだに話していない。)その頃からバイトを探し始めてなかなか決まらなかったけど11月の末から清掃の仕事に就き最初はフルで働いて精神的にも体力的にも随分きつい思いをした。でも年末くらいから相次いで生徒さんの入塾が決まり、今はもう少し生徒さんが増えればバイトを辞められそうなところまで来た。もっとももう一年弱バイトを続ければ母親に借りたお金は返せそうなのでもしかしたらそれくらいは勤め続けるのかも知れない。あんなにいやだった清掃の仕事も最近は慣れて来たのか前ほどいやではなくなり、本業は先週も体験授業の申し込みがあり昨日やったら即日入塾ということになった。小学校の低学年の生徒さんなので今の収入としては少ないけど来てもらえる年数が多くなるかも知れないのは大きい。お母さんの話では別の塾に通ってる上のお子さんももしかしたらこっちに、ということだったので期待している。
母親は僕が生まれたばかりの頃いくつかの占いで僕の運勢を占ってもらい複数の占いで「大器晩成」と出たと言う。ほんとはそんな言葉では何も占ったことにならない気もするし、サラリーマン時代は本当にぱっとしなかったのでどんな意味でも大器晩成な人生になどなりそうに思えなかったけど、最近になってしきりにその言葉が思い出される。今からでは大器と言えそうな大器になるのはもう無理っぽいけど、終始低調だった僕の人生にしてはまあまあ輝かしい方に向かって道は続いてるのかも知れない。夫婦仲が良く子供との仲も良くて、仕事はとても楽しくぜいたくはできないけどそれなりに暮らして行けるとすれば、あと足りないものはそう多くない。