指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

なにか持ってる。

塾の小六の中には小四の頃から来てくれている最古参の生徒さんたちがいて彼らは家人に英語圏の女性の名をあだ名としてつけている。たとえばローラならローラなんだけど家人も長くそう呼ばれてるうちになじんでしまったのかテレビなどからローラという名が聞こえると自分が呼ばれているように思えて心穏やかでないらしい。それがどうしたんだと言うとこの前本を出すときにペンネームを決めなくてはならなくてその際に家人が心がけたことがありそれは塾の生徒さんの名字とかぶらないようにすることだった。この場合もローラと事情が似ていて僕が生徒さんの特に親御さんの話をするときにたとえば小林さんなら小林さんと名字で呼ぶので、そうであっても自分が呼ばれているような気がしないように珍しい名字を選んだということだ。こうなるとオチは大体推測ができるかも知れないけど今週体験学習の申し込みがあり名前を尋ねると字は違っているけど読み方は正に家人のペンネームの名字と同じでちょっと背筋が寒くなった。決してよくある名字ではない上に漢字が異なることで余計にレア感が増している。自分にペンネームをつけることによって逆説的に家人がその生徒さんを呼んで来たとも受け取れ、ひいき目でなにか持ってる人だとは思っていたけど本当になにか持ってるのかも知れない。そんな家人は最寄りのブックオフに先週並んでいた自分の本が、売れたのか今週はなくなっていたと言って少なくともふたりが自分の本を購入してくれたとささやかに喜んでいる。