指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

有効求人倍率の楽観。

東京都では有効求人倍率が1.2を越えているそうでこれについて雇用状況はよくなっているとニュースなどでは結論づけているところもあるようだ。でも有効求人倍率の増加は雇用状況の改善を即座に意味するのか。求人が求職者の1.2倍あったとしても、その大半が非正規雇用で時給が千円の仕事だっだとする。週休一日で日に八時間働いたとして月に20万円にしかならない。ここから社会保険料とか年金とかを差し引かれれば手取りはさらに低い額になる。親がかりで実家に暮らしているならまだしも、ひとりで自立して生活する者にとっては相当に厳しい収入と言わなければならない。さらに言うと一日八時間週休一日というのは結構な重労働だ。日に十二時間働けば月30万にはなるがあまり現実的とは言えない。さらに問題なのはリストラされて妻子を抱えた中年男でも雇用条件は同じだということだ。ひとり暮らしでさえ苦しい収入でやって行ける訳がない。
こういうことはあまり言いたくないけれど有効求人倍率が増えたからと言ってそのまま雇用条件が改善したと言って澄ましている人はリストラされて茫然自失の中時給と労働時間を見比べながら職探しをする人のことをまったく想像できていない。求人は量ばかりでなく質も問わなければ現実的ではない。それだけでは暮らして行けない求人がいくら増えても雇用条件が改善されて楽になったなと考える求職者はごく少数に決まっている。板子一枚下は地獄だと吉本隆明さんは言ったけど地獄を垣間見たことのない人だけが実質の伴わない有効求人倍率の増加を楽観視できるのだ。