指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

想像力と倫理。

長い間、と言っても初版が出てからまだ三年半ほどだけど、ずっと読みたい、読まなきゃ、と思っていた作品。死者の独白、死者どうしの対話、死者と生者との対話、生者どうしでの対話が延々と続く。特に死者の独白と死者どうしの対話、死者と生者との対話は、真相が明らかになるにつれて深い悲しみが押し寄せるようになっている。ただしそれらは生者どうしの対話によってその倫理性が問題にされる。死んで行った者の苦しみや痛み、悲しみや無念といったものを安易に想像したりしていいのだろうかという風に。そこに作者の誠実さ、と言うかおそらく作者が実際にそういう疑義をつきつけられた体験みたいなものの重みを感じとることができる。その問いに答えが出される瞬間が心の深いところまで届くのは、その答えからこの作品のすべてが可能になる仕掛けになっているからだ。この答えを胸に抱いていれば誰もが愛しい死者との対話を実現させることができる。それがどこへもたどり着けず誰にも届かない、悲しい対話であったとしても。
あるひとつのイメージをきっかけに、想像力でぐんぐん広げて行かれるお話で、書くならこういうお話を書きたいし、誰もが「想像ラジオ」の自分バージョンを書いていいし、また実際に書けるんじゃないかと思った。