指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

いろいろなことがはっきりする。

男友だちを作ろう

男友だちを作ろう

作家のエッセイを読むとその作家の考え方がダイレクトに書いてあって小説で読み切れなかったいろいろなことがはっきりする場合がある。たとえばこの本の「エピローグ」にこうある。

(前略)男の人と仲良くなりたいと思ったときに、恋愛相手になるしかないなんて、嫌だ。(後略)

これに続く数行はこの作者の小説作品を読むときの大きな手がかりになると思う。もちろんそういうことじゃないかというのは小説を読みながらうすうす気づかされるかも知れないが、こうはっきり言われるとなんとなく安心できるところがある。
ところでこの本はエッセイと言ってもちょっと変わっていて、作者がいろいろな男性と会ってインタビューしたものをもとにして書かれている。(たとえば村上春樹さんの「アンダーグラウンド」みたいに。)その際、会話の流れをある物語に沿って後でまとめるということが極力避けられている。だから相手が食いついて来た話を作者が唐突に断ち切ってしまったり、そこは相手の話をもうちょっと聞いた方がいいんじゃないかと思われるところで作者の自分語りが始まったり、と、うまくかみ合わない感じがとてもリアルに保存されている。対談集なんか読むと意見が食い違ったところで言い合いみたいになることがたまにあるけど、そのときのリアルでスリリングな感じととてもよく似ていて読み応えがあった。

(前略)
「ふうん。じゃあ、女の子とは友だちになれますか?」
「女の子とよく喋る方ではあります」
「じゃあ、男女の友情はある?」
「いや、あんま、ないんじゃないすか」
「ないんですね」
「ないと思います」
「わかりました」
「それは、あくまで『男女の友情』であって、いわゆる同性同士にある、『友情』とは違うような・・・・・・」
「私はそうは思わない。・・・・・・大学では何を勉強してるんですか?」
私は、男の人といわゆる「友情」を築きたいと考えている質なので、つい話をそらしてしまった。
「数学です。・・・・・・友だちの話はもういいよって?」
「あはは」
(後略)
「第十二話大学生と喋る」より

・・・・・・という感じ。そういうところまで含めてとてもおもしろく読んだ。