指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

夢の中の女の子。

中学生か高校生かわからないけどおそらく十代の女の子と一緒に出かける夢を見た。彼女と僕は同じマンションの別の部屋に住んでいてエントランスで待ち合わせをした。映画だかコンサートだか行くべき場所は決まっていてそれは僕が手配を済ませていた。僕が部屋から下りて行くと彼女はすでにエントランスで待っていた。そこには何人かの人がいて僕は彼女を探さなければならなかった。彼女の顔にはまったく見覚えがなかったけどそれが彼女であることはひと目でわかった。すごく美しいという訳ではないけど個性的な、僕の目には充分かわいいと思える顔立ちで、こちらをまっすぐ見つめていた。そして手がとても美しかった。指と甲が細く長く伸びていてそのしなやかな指が僕の手を握った。そこには何のためらいもなくてそのことが僕にはとてもうれしかった。彼女は僕のためにおしゃれをしてくれていて手をつないで歩くと僕よりもほんの少し背が高いことがわかった。外見にはいろいろコンプレックスがあるけど背の高さにだけはちょっと自信があったので彼女が僕より背が高いことで胸がわずかに疼いた。そこで目が覚めた。夢の中の甘い感じは目を覚ましてからも長く続いた。
その話を家人にするとそれって犯罪じゃないのと言う。まあどういうレベルなら犯罪か考えると夢の段階では犯罪にはならないだろう。現実に今の僕が十代の女の子とデートしたとしても(そういう女の子がいてくれたらの話だけど)たぶんそれだけじゃ犯罪にはならないと思う。犯罪になるにはそれだけの要件が揃わなければならない。それより興味があるのはその夢の中の自分がいくつだったかということだ。彼女に手をとられたときの胸の震えから見てたぶん彼女と同年代だったんじゃないかという気がする。十五才の自分は今でも自分の中にいる、という趣旨のことを確か村上春樹さんも言っておられた。もしそうなら同年代どうしのデートということになり、だったらまあ、特に問題は無さそうだ。見る夢のかなりの部分は悪夢だけどごくたまにとても甘い夢を見るとそれは長く強い印象を残す。