指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

傾向。

塾を始めて四年半が経った。このまま行けばおそらく五周年は迎えられそうでそれは当初の目標と言うか、切なる願いと言うかそういうものが達成できることなので喜ばしいと言えば言える。五年保ったお店というのはその後も結構安泰だとも聞く。でも商売というのは本当に水物なので先のことはわからない。現状は最悪のシナリオよりはずっとマシだけど最高のシナリオよりはかなり悪い。最低でも塾一本で食べて行けるところまでは持って行きたい。
塾を始めるまでこれほど生徒さんが辞めるものだとは思ってなかった。それは大きな誤算だった。辞める理由には大きく二つある。ひとつは成績が上がらないこと。もうひとつは経済的な理由だ。前者に関しては普通の生徒さんが普通に通っていれば普通に成績が上がる程度の授業はできていると確信している。問題は普通でない生徒さんがいることだ。10月いっぱいでふたりの生徒さんが辞めたんだけどこう言ってはなんだけどふたりとも充分に学習障害が疑われる生徒さんだった。前にも書いた通り実感では十人に一人くらいはなんらかの学習障害が疑われると思う。そして自分の子に学習障害があると認める勇気を持てる親御さんというのは学習障害百人に対してひとりいるかいないかくらいだ。大抵の親はそのことから目を背ける。そして普通の学校に入れたがる。当然子供は授業に着いて行けない。親は自分の子の抱える問題は棚上げして学校とか塾とかに責任を押しつける。それは別に構わないんだけど問題は永遠に解決されないことになる。いちばん大変なのはもちろんその子自身だ。かと言って塾としては親御さんに対しておたくのお子さんは学習障害が疑われますよと言う訳にも行かない。それは塾の評判を決定的に落とす結果を招くだろう。塾の落ち度を生徒のせいに、それもかなりひどい手段を使ってしているととられかねないからだ。なので黙って辞めてもらう。経済的な理由の場合も塾としては手の出しようが無い。同じように辞めてもらうだけだ。
でも毎年生徒さんの出入りをエクセルでまとめて来てちょっとだけ傾向がわかり始めた。あるいは傾向がわかる程度にはデータが集まったり、塾の存在自体が地域に浸透したりしたと言った方が正しいのかも知れない。まず通常考えられがちな通り新学期は生徒さんが入って来やすい。今年も何人かまとめて入ってそれで随分助かった。そして意外と夏休み前後に受験生に動きがある。受験生に限って言えば夏休み前にひとり辞めてひとり入り、夏休み後にもひとりが辞めてひとり入った。これは辞める方も入って来る方も夏休み前後にこのままでいいのか迷うという事態を意味している気がする。これは多かれ少なかれ毎年必ず見られる現象だ。個人的な意見を言わせてもらえば迷うには遅すぎる。こんなところで迷っていては合格はとても覚束ないと思うけどもちろん入ってくれた生徒さんのためには最善を尽くす。小学生は小三で塾に通おうとするケースが最も多い。四月からこれまでで実に五人の小三の生徒さんが新たに入った。原因は小三で勉強が難しくなるせいもあると思うけど、意外と小二でつまずき始める生徒さんが多いということかも知れない。小二の漢字とか結構難しいから。それから春とは反対に秋は生徒さんが辞めがちな季節だ。去年もそれで苦労したし今年も同様だった。特に去年は辞めるばかりで入って来なかったので10月以降収入ががくっと減った。なんとかなったのはひとえに家人の収入のおかげだった。ところが。
しばらく来なかった問い合わせが先週今週で三件来た。特に今週は昨日今日連続して一件ずつ。なんとか入ってもらえるといいがなと思っている。こうした期待と不安と安堵と失望の日々がもう四年半も続いている。