指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

まあまあそれなりにおもしろい。

宇宙ヴァンパイアー (新潮文庫)

宇宙ヴァンパイアー (新潮文庫)

このシリーズでは巻末の村上春樹さんと柴田元幸さんの「解説セッション」を楽しみにしている。それによるとこの作品を村上柴田翻訳堂の一冊に取り上げたのは村上さんの意向によるものだということがわかる。その理由もはっきり述べられている。個人的には村上さんのその理由というのはよく理解できたんだけど、ただそれはやはり読みの玄人と言うか、小説全体に対してある程度以上広い視野に立つことができる人にしかできない理由付けであるように思われる。(余談だけどこれを読むとドストエフスキーカフカの独自性がたった一行でわかってしまうので「解説セッション」だけでも読むことをお勧めします。)
では本編はどうだったかと言うと個人的にはまあまあそれなりにおもしろかったというところで落ち着いてしまう気がする。それは別に村上さんに異を唱えるとかそういうのではなく、広いパースペクティブに立たず作品対自分という狭い枠組みの中で考えればということだ。今のところ僕にはそういう枠組みの中で何か言うことしかできないのでそれは仕方ないことだと思う。ただそういう読み方をしている限りこの前の「ナサニエル・ウエスト傑作選」のように作品のもう一段深い価値みたいなものをつかめずに終わり続けるしかないのかも知れない。