指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

九月。


九月になったなと思ったらもう半ばだ。早い。八月いっぱいで夏期講習が終わり新しいバイトも見つけてないので仕事は依然週六日午後からの六時間のみ。塾というのは生徒さんが問題を解いているのを待つ時間というのが結構長くて今までは気持ちに余裕がないのでただ漫然と過ごすことが多かったんだけど、一旦本を読もうと決めてしまえば一日あたり相当なページ数が読める。それでとりあえず村上柴田翻訳堂の作品はすべて読んだ。ブックオフ・オンラインで探すと価格もかなりこなれていたけどフィリップ・ロスの「素晴らしいアメリカ野球」ともう一冊(どれだか忘れた)は在庫がなくてプロパーで買った。それから村上春樹さんの訳された二作品はあまり値崩れしていないのが印象的だった。全部読んでみていちばん心に残ったのは「卵を産めない郭公」、それから「結婚式のメンバー」、「素晴らしい・・・」と続く。あと二冊だけ挙げれば「アリバイ・アイク」と「チャイナ・メン」か。「結婚式の・・・」の作者カーソン・マッカラーズの「悲しき酒場の唄」の白水社Uブックス版をアマゾンのマーケット・プレイスで見つけてちょっと高かったんだけど買った。感想は後日。
晴れていれば午前中はたいてい家人と出かけるんだけどきょうは雨だったのでふたりでうちにいた。昨日随分読み進めた「悲しき酒場の唄」の続きを読んでたんだけどすぐに読み終えてしまい、これから読む本は塾に置くことにしてるのでその他に読むものを探していると途中までしか読んでないNHKの100分de名著の「ウンベルト・エーコ 薔薇の名前」のテキストがあったのでそれを読むことにした。一回目の放送は見たけど二回目はまだ見てなくて録画してある。翻訳が出たときすぐに買った記憶があるのでこの作品を読んだのはもう三十年近く前だ。その割には印象的なシーンをすごくよく覚えている気がする。もしかしたらどこかで読み返したんだろうか。夏期講習中昼寝ができなかったせいで今は昼寝しようとしても眠れないことが多く、今日もそうだったので昼食後も続きを読んだ。とてもおもしろかったけど考えてみるとこのテキストの存在意義というのが今ひとつよくわからない。すでに読み終えている読者の読みを深めるという点では明らかに分量が足りない。まだ読んでいない読者を本書へ誘うという意味ではネタバレに過ぎる。じゃあ何がおもしろかったのかと言うとエーコ自身のこの作品に対するコメントが読めることで、それってたとえば「バラの名前覚書」のようなエーコ自身の著作を読めば済むことなんじゃないかと思う。あるいはまったく読まないという選択肢ももちろんある訳だけど。個人的にエーコの小説は本作の他に「フーコーの振り子」、「前日島」、「バウドリーノ」しか読んでないので他の作品も読みたいんだけど高いんだよな−。いつか読もう。