指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

叶えられない愛について。

悲しき酒場の唄 (白水Uブックス)

悲しき酒場の唄 (白水Uブックス)

叶えられない愛についてなら個人的にはとても詳しい。表題作「悲しき酒場の唄」には三つの叶えられない愛が描かれている。愛を抱く前は三人とも孤独でありしかしその孤独を自分なりに受け入れ自立してこう言ってよければ自然で自分らしくあるように見える。(たとえその素行がひどく荒れていたとしても。)でも愛し始めたときから愛するものにとっての悲劇が始まる。誰もが愛する相手に尽くしたいと望み実際に相手のために尽くすが、相手は自分にとって都合のよい部分をつまみ食いするだけで最終的には愛するものを拒む。愛するものにとってそれは全世界から拒まれることに等しい。そこにはどんな誇りも、勇ましさも、希望も、意志も、生命力もない。ただ悲しみだけがある。個人的にはそこに留まり時間が過ぎ去るのをただじっと待つしかなかった。でもあるものは相手に復讐しようと試みる。自分の愛を拒んだことを理由に。でも本当にそんなことをする正当性があるのだろうか。自分を愛さなかったからという理由で相手に代償を支払わせることが可能なのだろうか。世界はそういう風にはできてはいないのに。ただもしかしたらそうすることだけが、拒まれたものが生命力をつなぐ唯一の手段なのかも知れない。あまり賛成できないけどそういうこともあり得るように思われた。