- 作者: F.スコットフィッツジェラルド,F.Scott Fitzgerald,小川高義
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/12/09
- メディア: 文庫
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全部で九編が収録されている。稀なケースをのぞけばそこに登場するのは美しい女とその貧乏な、あるいは裕福な恋人(たち)もしくは夫だ。そして全員がそれぞれの幸せを割と貪欲に追い求めている。そのせいで美しい女と彼女を愛する男たちは時に対立する。美しい女たちは男に裕福さを要求することが多いようだ。岡崎京子さんの「pink」の帯に「愛と資本主義」という忘れがたいコピーがあったのを思い出す。フィッツジェラルドの短編では愛と幸せは資本主義ととても密接に結びついている。それは時代の寵児となり一世を風靡しながら妻ゼルダと共に没落していった作者の生(なま)の価値観がどうしてもぬぐい去れないかのようだ。でもいくつかの作品は美しい、哀しい幕切れを持っている。これこそフィッツジェラルドの作品だとそのとき思う。いくつかの短編は他の短編集でも読めることを付記しておく。