指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

捨てる神あれば。

11月いっぱいでふたりの生徒さんが塾を辞めることになった。ひとりは小学六年生の男の子で理由はうちで勉強しないこと。でもそんなこと言われても塾としては困る。大体小六でコンスタントにうちで勉強する子なんているんだろうか。中学受験をする子を別にすれば宿題が出るからいやいやそれだけはやるというのが実情ではないかと思うんだけど。結構長く通ってくれていた子なんだけど仕方ない。もうひとりは中三の男の子で理由は高校受験をやめてなんか特別な学校に推薦入学するから。この子はもともとちょっと変わっていて塾に来ても自習したいということで授業は全く聞かずにひとりでなんかのテキストを開いてたり寝てたりしていた。質問なんて一度もされたことがない。来る意味ないじゃんと思ったけどそれでいいということなのでほっといた。おそらく成績もかなりひどかったんじゃないかと思う。それは先の小六の子にも当てはまる。塾を辞める子というのは大抵成績が悪い。それを塾のせいにしたいのはわかるしそれは幾分かは正当なんだろうけどでもより多く本人のせいだと思う。うちの塾でめきめき成績が上がる子というのもいるからだ。
それからもうひとり小学五年生の女の子がちょっとあやしかった。同じ学年の男の子ふたりと一緒に受講してたんだけど(ちなみに三人とも学校は一緒で友だちどうし。)、彼女が問題を解くのがちょっと遅かったりすると男の子たちが早くしろよみたいなことを言う。そういうことを言うのはやめようと諭してもやめない。悪気がなさそうなのが余計にたちが悪い。おそらくそのせいだと思うんだけど彼女が休みがちになった。デリケートであまり自信のなさそうな女の子に見えるけど僕に言わせれば三人の中でいちばん頭がいい。この仕事で二番目にやりがいを感じるのが頭のいい子を教えることだ(ちなみにやりがい一番はできない子ができるようになること。)。男の子ふたりによると学校で彼女はもう塾を辞めると言ってるそうで、僕になついてくれているように思えたこともあってそれは残念だなと思った。また本音を言うと先の二人で月四万円以上の減収で彼女も辞めると合わせて六万近い減収となってそれは結構深刻な事態なので避けたいという思いもあった。それでダメ元でお母さんにメールを書いて、男の子たちと一緒の授業が嫌なら時間帯をずらしてひとりで授業してもよい旨伝えた。そうしたら来ると言う。できない子が辞めるのは仕方ないけどできる子が辞めるのは精神的なダメージも大きいのでそれをつなぎ止められてよかったし、減収額もやや減ってその意味でもよかったと胸をなで下ろしていた。そしたら。
11月も半ばになって新しく中一の生徒さんが塾に入ることになった。お父さんが電話をかけてきたのが10月半ばくらいで一度話をしに来た後音沙汰がなかったので諦めていたら時間割が他の中一の生徒さんと合わないのだが個別に見てもらえるかとほぼ一ヶ月後に電話があったので引き受けることにした。そして先週になってこの春一度辞めた小学生のお母さんが尋ねて来てもう一度通わせたいのだが大丈夫だろうかと言うのでこれも二つ返事で承諾した。おかげで減収は一万円程度にまで縮まった。この仕事は本当に捨てる神あれば拾う神ありだ。もしくは禍福はあざなえる縄のごとし。そうは言っても今年度は辞める生徒さんが激減して大変助かっているんだけど。