指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

全篇本邦初訳。

 

橋の上の天使

橋の上の天使

 

  奥付を見るとこの本の初版が出たのは1992年6月となっている。底本はKnopf版の「The Stories of John Cheever」で先日触れた村上春樹さん訳「巨大なラジオ/泳ぐ人」と同じだ。二冊では「さよなら、弟」あるいは「ぼくの弟」のみかぶってるとこの前書いたけど読んでみたらもう一編川本三郎さん訳では「父との再会」、村上さん訳では「再会」というタイトルの作品がかぶっていた。なので川本さんの15編プラス村上さんの18編マイナスかぶった2編ということで、二冊で31編の短編あるいはエッセイを読むことができる。これは底本の61編のほぼ半分に当たる。訳者川本さんはおそらく初訳ということにこだわって作品選びをしているのですでに翻訳されたことのあるものはあえて収録しなかったということらしい。村上さんは代表作も訳しているのでそれが二冊の味わいの違いをつくっている。良い悪いの問題ではなく川本さんの本は全般的に地味目な印象を与え村上さんの本の方が印象は派手になる。それは後者が代表作という振れ幅の大きい作品を含んでいることから来ている。もうひとつあるとすればうまく言えないんだけど川本さんの本の方が作者のいろいろな面を幅広く感じさせてくれる気がする。バラエティーに富んでいる。それに比べると村上さんの本は印象の似た作品が収録されており統一感があるように思われる。だからなんだと言われるとだから二冊とも読んでみたらということになる。いつの日か61編すべてを翻訳で読むことができるといいと思った。