指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

100分で名著「カラマーゾフの兄弟」

 NHKEテレの番組「100分で名著」をたまに見ている。その前の「グレーテルのかまど」が楽しくていつからか習慣にして見始めたら続いて始まるこの番組も流れで見ることが多く見ているうちに割に興味深く思えたからだ。テキストまで買って本腰を入れて見たのは「バラの名前」が最初だった。もっともその番組でいちばん衝撃だったのは現在の訳書が結構怪しい訳なんじゃないかということだったけど。今回の講師は光文社古典新訳文庫から「カラマーゾフの兄弟」の新訳(と言ってももう13年も前のことだけど!)を出された亀山郁夫さん。あのときはプチ「カラ兄」ブームになったと記憶している。僕も買って読んだことはこのブログでも触れた。若い頃だったら名作について100分で解説するというコンセプトそのものを心から嫌ったに違いない。そういう形での啓蒙というのはお手軽すぎると。でも今ではそんなの大きなお世話だと思うし個人的にはすでにその作品を読んでるのだからどこからどんな情報が入ってきても特に問題はない。新しい説が聞けたり解釈が深まったりすればそれでいい。と言うかある作品に対する全体像というのを明確に結ばせるのは本当に難しくて解釈が深まるどころか忘れていたことを思い出させてもらうだけでも充分有意義に思えるしとても楽しい。名著を、特に大部のものを読むということは折に触れてそこへ戻って行く時間を持てることなんじゃないかと思う。その意味で、学びてときにこれを習うまた楽しからずやというのはこういうことを指してる気がする。