指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ちょっとかわいそうな気もする。

 子供のことがあって大学の入学金と授業料の補助について調べてみると本来なら去年の7月までに申し込んでおかなければならなかったことがわかった。でも大学に入ってからでも申請できるらしいのでうちにはそんなお金は全然無いからとりあえず入学時のかかりは実家からでも借りることにして申請が通って補助金が下りたらすぐに返そうかと考えている。それはそれとして補助を受け続けるためには成績が安定していなければならずということはある程度まじめに勉強することが前提となる。うちの子は僕とは違って大学で勉強したいことがいろいろあるみたいなので特に心配はしてないけど大学独特のあの何をしてもいいしなんにもしなくてもいいという野放図に近い自由な感じを満喫できなさそうでちょっとかわいそうな気もしている。僕なんか大学なんてまるで行かずにずっと部屋で本を読んだりお気に入りの喫茶店に何時間も入り浸ったりアパートに子供たちを集めて週に五日も塾をやって荒稼ぎしたり新宿にあったちょっと雰囲気のいいバーの常連になったりして単位不足で二年も留年してその間に受かった誰でも知ってる有名な企業から内定取り消しを食らったりしていた。本当にいい気なもんだったけどそのおかげでずっと貧乏暮らしなので割に後悔している。そう考えると補助のために成績のことを気にしなければならない子供はむしろ道を踏み外さなくていいんだろうか。ところで大学時代の話をすると家人からお父様からよくバットで殴り殺されなかったわねと言われる。そうでありながらさらに実家から借金しようと思ってるんだから我ながら大したもんだ。