指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

結局。

 結局子供は日大にも落ちてしまったけど多少戸惑いはあるものの割にさばさばしていて親としてはまあよかったかなと思っている。あまり落ち込んでしまってもかわいそうだから。予備校と言っても昨今の状況は僕にもわからないので自分で調べてもらうしかない。僕自身はとにかく駿台しか頭になかったしその通り駿台へ行った訳だけど子供の場合はまた違う選択が必要かも知れない。予備校のことを思い返すと英語の伊藤和夫さんはじめ何人かの名講師がいて授業がすごくよかった記憶がある。でもそれが役に立ったかと言うと正直よくわからない部分がある。勉強というのは結局のところ自分でやるしかないんじゃないかという気もする。伊藤さんの授業を直に受けて手に入れたものより「英文解釈教室」を初めとするご著書を何度も解いて身につけたものの方が断然大きい。子供もそんな迷いを持ってるようだけど前言と矛盾するけどさすがに宅浪は厳しいんじゃないかとも思う。なんらかの形でのペースメイカーはあった方がいいような。ただ新型コロナウィルスの問題もあるし簡単には決められない部分もある。実際うちのそばにある大手の学習塾はここのところしばらく休んでいるようだ。休んでいて大丈夫なんだろうか。地代は毎月かかるだろうとか講師の待遇はどうなってるんだろうとか他人事ながら気になる。
 うちの塾は窓を広めに開けて風を通しながら通常営業している。生徒さんたちの手洗いもすっかり定着した。休む生徒さんもいない。午前中の春期講習は結局何名かが参加してくれて懐はちょっとだけあったかい。小学生の自習の時間にも生徒さんは集まっている。午前中も飴もらっていいんですかと聞かれればあげない訳にも行かない。だから飴の消費量が増えた。今の政府の動向を見ているとうちくらいの規模の教室でも人を集めてはいけないというルールで強制的に閉めさせられることになるかも知れない。あるいは感染の規模が拡大して親御さんの方から通わせたくないと言ってくるかも知れない。あっさり生徒さんか僕かが感染して授業の継続ができなくなるかも知れない。こちらでできることは最大限やってるつもりだけど向こう側から手に負えない規模で何かがやって来たらうちなんてひとたまりも無い。そのことはわかっていてでも打つ手は何も思いつかない。だから先行きはものすごく不透明なんだけど、でも考えてみたらこの七年半ずっと、先行きなんて一度も見通せないままにやって来たんだった。恐れても仕方ない。恐れること自体にあまり意味が無い。